就業規則変更に伴う意見聴取しない場合のリスク

他県のお話となりますが、今月、就業規則を変更する際に、過半数代表者を適正に選出せず、意見を聴取しなかったとして、法人と事務局責任者が違反の疑いで書類送検された事件がありました。意見聴取に当たって、同法人は民主的な手続きを取らず、過半数代表者を指名していた。労基署は、36協定も過半数代表者の選出方法も不適切として、無効と判断した。有効な36協定がないまま時間外労働をさせたとして立件に至ったとの事。

就業規則の変更は、企業が円滑な事業運営を行う上で不可欠な手続きですが、その手続きを誤ると労働基準法違反となり、刑事罰の対象となるリスクがあります。特に、労働者にとって不利益となる変更を行う際に、労働者代表からの意見聴取を怠った事例では、実際に企業が送検されるケースも発生しています。

労働基準法が定める「就業規則変更」の必須手続き
労働基準法では、就業規則を作成・変更する際、労働者の権利保護のため、厳格な手続きを義務付けています。

意見聴取の義務(労基法第90条) 会社は、就業規則の作成または変更について、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければなりません。この意見聴取は、単に「変更する」と通知するだけでなく、変更案の内容を説明し、労働者側からの意見や要望を聴くという、実質的な対話の機会を設ける必要があります。

届出の義務(労基法第89条) 就業規則の作成・変更後は、労働基準監督署長に届出をしなければなりません。この届出の際、「意見書」(意見を聴取したことを証明する書類)を添付する必要があります。

意見聴取は「同意」ではないが「手続きの義務」である。
意見聴取の結果、労働者側が変更に反対の意見を示したとしても、会社は就業規則の届出を行うことは可能です。つまり、意見聴取は同意を得ることが目的ではなく、意見を聴くというプロセスそのものが義務とされています。

しかし、労働者側の意見を聞かずに届出を行った場合、届出を受理した監督署の調査や、労働者からの申告によって労働基準法違反が発覚します。

労働基準法第120条は、意見聴取義務違反(第90条違反)に対し、「30万円以下の罰金」を定めています。労働基準監督署は、この違反が確認された場合、司法処分を求めるために事件を検察庁に送る(送検する)ことがあります。

特に送検に至りやすいのは、以下のような悪質なケースです。

”塒益変更であるにもかかわらず、全く意見聴取を行わなかった場合。
形式的な通知に留まり、実質的な意見聴取の場を設けなかった場合。
O働者代表を恣意的に選出するなど、意見聴取の手続きが不公正であった場合。
は働基準監督署から是正指導を受けたにもかかわらず、改善しなかった場合。