業務外の病気や怪我で働くことができない場合に支給される傷病手当金において、「精神及び行動の障害」(主に精神疾患)を理由とする支給件数が急増しています。協会けんぽ(全国健康保険協会)などの統計によると、その支給件数は近年増加の一途をたどり、7万件を超える水準に達するなど、日本の労働者の間で「心の病」が深刻化している実態が浮き彫りになっています。
●背景にある要因:なぜ「心の病」が増え続けるのか
精神疾患による傷病手当金の支給件数が増加している背景には、複合的な要因が考えられます。
.瓮鵐織襯悒襯弘媼韻慮上と受診の敷居低下 以前に比べて、企業や社会全体でメンタルヘルスへの関心が高まり、精神科や心療内科を受診することへの抵抗感(スティグマ)が薄れてきたことが、潜在的な患者の顕在化に繋がっています。
∀働環境の変化と高ストレス 長時間労働、職場の人間関係の複雑化、ハラスメント(特にパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント)、そしてコロナ禍を経ての仕事内容や量の急激な変化など、職場における心理的負荷が増大しています。実際に、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の労災支給決定件数も、近年過去最多を更新し続けており、職場環境が大きな要因となっていることが裏付けられます。
7从囘な不安や社会的な孤立 特に若年女性層では、非正規雇用の不安定さや、社会的な孤立感の増加がメンタルヘルスの悪化に繋がっているとの指摘もあります。
●企業に求められる対策と課題
傷病手当金の増加は、企業にとって休職者増加や労働生産性の低下に直結する大きな問題です。企業には、従業員の心身の健康を守るための、より積極的かつ実効性のある対策が求められています。
ハラスメント対策の徹底: 労災認定の具体的な出来事として「上司等からのパワーハラスメント」が最も多いため、ハラスメント防止と適切な対処が急務です。
ストレスチェック制度の活用: 制度を単なる義務ではなく、高ストレス者への面接指導や職場環境改善に繋げるためのツールとして活用する。
相談しやすい体制づくり: 産業医や外部EAP(従業員支援プログラム)の活用など、従業員が安心して相談できる窓口を整備することも検討してみてはいかがでしょうか。