社労士との顧問契約で労務管理はどう変化する? 依頼のタイミングとは?

創業から事業も安定してきて、他の経営者から「社労士に労務管理を委託していないの?」と言われ、委託を検討しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「働き方改革」に沿って、企業では残業削減や休暇の充実、リモートワークの推進等、さまざまな施策が進められるようになりました。また、パワハラ防止法の中小企業への適用も始まり、労務を取巻く法改正が毎年のように行われています。

労働者に適用される法律の専門家である社労士と顧問契約を結べば、労使トラブルを未然に防ぎ、働き甲斐のある会社へと舵を切ることができるでしょう。

本記事では、社労士と契約を結ぶメリットや依頼できる業務例、依頼した場合の費用相場等をお伝えしますので、社労士への委託を検討する際の参考にして下さい。

◆執筆者

比嘉 正人
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
労働保険・社会保険手続き、給与計算・人事労務管理業務を行う。現在は賃金制  
度・人事評価制度構築コンサルティング業務を中心に「人事労務管理のポイント」、「すぐできる人事評価制度の実践」「会社を守る就業規則」「管理職研修」「評価者訓練」「活用しやすい助成金」「職場のメンタルヘルス」「ハラスメント( セクハラ・パワハラ )防止のために」等をテーマとしたセミナーも多数行っている。これまでの講演実績は500件以上である。

社労士と顧問契約を結ぶ3つのメリット

顧問契約を結ぶメリット

労働保険、社会保険の業務は、その都度スポットで依頼することも可能ですが、スポットは通常の顧問料と比べ割高なことや、自社で労務管理について正しく理解して運用するまでの時間等を考えると、効率が良いとはいい切れません。ここからは社労士と顧問契約を結ぶメリットについて解説していきます。

社内リソースが確保されコスト削減につながる

労働保険( 労災保険・雇用保険 )や社会保険( 健康保険・年金 )の手続きは、会社の労務管理担当者等で対応です。とはいえ、書類作成だけでも手間がかかり、昨今では法律改正が毎年のように行われているため、それに対応すると業務に支障が出てしまいます。

また、労務管理担当者等に急な退職や休職が生じると、一から新たな担当者への教育が必要です。しかし、昨今の人手不足から、タイミング良く担当者を雇用できるかわからないこともあるでしょう。そういった場面に顧問社労士がいれば、日々の事務手続きや、法律改正の対応を安心して任せられます。

さらに、社会保険の加入の事業所には、年金事務所の総合調査が2、3年に1回ありますが、その際にも顧問社労士がいれば安心でしょう。

この調査は、社会保険加入が適正に行われているか、 給与の大幅な変更や賞与があった場合に適正に届けられているか等を確認するために実施されます。

顧問社労士がいれば、そういった調査にも安心して対応できるように、日頃から、適正なアドバイスが受けられ、未然に届け漏れ等を防ぐことも可能です。社労士によっては直接、年金事務所まで一緒に行って、調査の立ち合いをしてくれることもあります。

ただし、社外経費として、顧問費用が発生しますが、労務管理担当者の採用、育成、給与といった人件費やコストを考えると、社労士と顧問契約を行ったほうが経費を抑えることができます。

例えば、顧問費用は一般的に委託内容と労働者数によって異なりますが、労働保険と社会保険の顧問契約で労働者20名の場合、3万円~4万円が相場です。労働者50名になると6万円~7万円となり、労働者数が増えれば増える程、労働者1名あたりの単位は下がります。

労務管理担当者1名の雇用に、一般的に15万円~25万円(福利厚生費含む)かかるのを考慮すると、明らかにコスト削減になることがわかるでしょう。

専門家から有益な情報を得られる

労働保険や社会保険、労務管理等については法律改正が多いものの、顧問社労士がいれば、いち早く当該情報を提供してもらったり、専門家ならではの説明を直接聞けたりします。これは法律を正しく理解して、運用することが必要な事業主様にとって、心強いでしょう。

また、雇用に関する助成金は多岐にわたりますが、助成金に詳しい顧問社労士がいれば、概要の確認やチェックポイントを教えてもらえます。いち早く理解して、申請可否を検討することも可能です。

健全経営を実現しトラブル防止や従業員からの信頼につながる

会社に合った就業規則を社労士と相談しながら作成し、会社のルール( 主に規律 )と労働者の権利( 主に休暇 )を周知していれば、事前にトラブルを防止できることがあります。

例えば、就業規則にハラスメント防止規程があれば、トラブルが発生した際には規程に沿って事態を収められます。規律違反者には始末書を提出させて戒める、繰り返すならば、減給や懲戒解雇で処分する旨が記載されていれば、加害者になりうる労働者も言動を留めることが想定されるでしょう。

また、法律改正があった場合に、社労士から改正に沿った規則改定の助言が受けられ、間違った理解や運用を避けられます。

現在、インターネットで情報は誰もが受け取れ、従業員から法律改正を指摘されることも少なくありません。

顧問社労士からの最新情報提供や、それに関するアドバイスが常日頃から受けられれば、安心して労務管理ができ、従業員からの信頼につながります。

社労士に依頼できる業務を具体的に紹介

社労士に依頼できる業務

社労士の業務には、1号業務・2号業務・3号業務というものがあります。

社会保険諸法令に基づく申請書の作成や提出の代行

1号業務とは、社労士のみが行える業務です。従業員を採用した際に行う雇用保険・社会保険の資格取得手続き、育児休業をした際に行う育児休業給付金申請の手続き、私傷病で休業する際に行う傷病手当支給の申請手続き、退職した際に行う雇用保険・社会保険資格喪失、離職票等の作成を行い、行政機関への提出代行をします。
 
上記以外にも、多岐にわたる、書類の作成及び行政機関への提出があります。この手続きには、それぞれ所定の書式があります。

この所定の書式への記載事項への誤りがあれば、受理されず再提出が求められることになりかねません。

また、要件を満たしていたにも関わらず、手続きを怠っていたためにさかのぼって手続きしなげればならない場合もあります。事務手続きに手間がかかるだけでなく、従業員が不利益を被ることもあるでしょう。

そういった場合にも社労士に依頼すれば、事務手続きの手間を省けるだけでなく、従業員に対する不利益の回避も可能です。

法定帳簿書類の作成

2号業務とは、1号業務と同様に社労士のみが行える業務で、労働者名簿作成・賃金台帳作成・出勤簿作成等、法令に基づいた帳簿作成業務です。常時10名以上の労働者を使用する場合には、就業規則の作成及び届け出が義務付けられています。

就業規則とは、雇用主と労働者間の雇用に関するルールを定めたものです。あらかじめ、就業規則で労働者の労働条件や服務規律を定めていれば、トラブルの生じにくい環境にすることができるでしょう。

就業規則には、記載が必要とされる「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」があります。これらを社労士に作成依頼すると、より良いルールを作れるうえに、労働者とのトラブルにも対処できるようにすることが可能です。

労務や社会保険に関するコンサルティング業務

3号業務とは、人事労務コンサルティング業務です。3号業務には、従業員採用時や人事評価に関するアドバイスが該当しますが、これらは社労士のみが行える業務ではありません。

また、労使間で起こったトラブルに対処する際は、労働関係の法律に詳しく、数多くの事例を経験してきた社労士に依頼すれば、より良い方法を提案してもらえます。

社労士との顧問契約を検討すべきタイミングは?

社労士と顧問契約のタイミング

社会保険労務士は、労務管理に関する唯一の国家資格者です。会社内で発生する様々な労務管理に対する指導・相談、複雑で多岐にわたる労働社会保険の諸手続きを、労務管理担当者に代わって、円滑かつ的確に行います。

もし、ご自身の会社が次のような状況にあり困っているなら、社労士との顧問契約を検討してはどうでしょうか。

事業が忙しく、労務関係の業務に手が回らない

労務管理業務を行う専任担当者を設けず、本業を行いながら労務管理業務も兼任する方も多いことでしょう。しかし本業が忙しくなると、労務管理業務は後回しになりがちです。

この場合、労働社会保険の諸手続きの遅れによって従業員に不利益が発生すれば、労使間のトラブルへと発展し、本業にも影響を及ぼすことになりかねません。

労働社会保険に関する諸手続きを社労士へ委託すれば、諸手続きは社労士に任せられるため、本業に専念ができます。

労務管理担当の従業員が退職する、または産休や育休を取得する等

社内の労務管理業務を、一人の従業員が一手に引き受けている、という会社もあるのではないでしょうか。

その従業員が退職や、産休・育休の取得、急な病気等により休職する状況が発生すると、緊急に後任担当者の採用や選任、業務引継ぎ等を行わなければなりません。そして、後任担当者には、業務引継ぎを受けながら、労務管理業務に必要な知識を短期間に習得することが求められます。

そこで、専門知識を持つ社労士へ労務管理業務を委託すれば、担当従業員の負担を軽減でき、業務引継ぎも円滑に進められるでしょう。

従業員数が増加した

従業員数が少ないうちは、労務管理業務の負担は少なめですが、従業員数が増加してくると労務管理の幅が広がります。例えば、従業員10名以上の事業場には就業規則を作成して、労働基準監督署への届け出る義務があります。
就業規則は、事業主と従業員との間で雇用に関するルールを定めたものです。 具体的には、労働時間や休暇、賃金の支払い、解雇・懲戒処分の事由、服務規律の内容等、就業にあたり従業員が守るべき規律を定めています。

規則作成には労働基準法等の専門的な知識が必要となり、自社で作成するには相当な労力が求められますが、社労士に委託すれば、最新の法律に沿った就業規則が作成ができます。

これから事業を立ち上げる予定がある

従業員を雇い入れる際には、法律により様々なルールが定められています。

例えば、従業員を1名でも雇うと労働保険の加入が必要、個人事業の場合は従業員5名以上、法人の場合は1名以上だと社会保険にも加入が必要、さらに、採用する従業員の労働条件は、労働基準法に定めるルールに基づかなければなりません。

このように会社創業時には、従業員の労働条件設定や労働保険・社会保険加入の手続きが必要です。しかし、本業の準備に手一杯だと、労務管理や労働保険・社会保険手続きの時間を設けるのは難しいかもしれません。

社労士と顧問契約を結ぶと、従業員を採用する際の労働条件の設定や、労働保険・社会保険のスムーズな加入が可能です。また、従業員の雇い入れや事業拡大時に活用できる助成金もあるため、そのアドバイスも受けられます。

社労士と顧問契約を結ぶ際の費用相場

社労士の費用相場

労働保険・社会保険の手続きと、労務管理の関する法律相談を行う顧問契約では、顧問料は労働者数によって変わるのが一般的です。
また、就業規則等の作成は別途費用が発生するのが一般的です。それから助成金申請は、着手金や成功報酬の組み合せになっていることが多く、給与計算も別途料金が発生することがほとんどです。

社労士顧問報酬額の算出方法

社労士とはスポット( 1回やある特定期間 )での依頼ではなく、継続契約での活用でメリットを得られます。それでは社会保険労務士と顧問契約を結んだ場合の費用相場、報酬相場はどの程度でしょうか。

社労士の報酬は、基本的に従業員数に応じた月額料金ですが、その理由は、従業員数によって相談業務量が異なるためです。以前は、下記のような一律の報酬規程なるものが存在していました。

4人 以下2万円
5 ~ 9人3万円
10 ~ 19人4万円
20 ~ 29人5万円
30 ~ 49人6万円

従業員数が50人以上となると、「要相談」としている事務所が多いようです。

しかし、この報酬規程は独占禁止法に抵触するとして、平成14年に廃止されています。ただし、廃止後であっても、社労士業務の難易度や分量には大きな変化がないため、社労士事務所では、この規程を参考に報酬を決めていると思われます。

上記は、従業員の入退社に係る基本的な手続きに、相談業務を含んだ場合の報酬です。人事労務に関する相談やアドバイス、細かな指導や情報提供等が主な業務といえます。

社労士事務所では、下記のように大まかな業務を分けて契約プランを提案しています。

  • 各種労務手続き+相談業務
  • 各種労務手続きのみ
  • 相談業務のみ

近年はコロナ禍もあり、オンラインでの面談相談、チャットワーク、ラインを駆使したメール顧問サービスを展開している社労士事務所も増えています。

月額業務に含まれない関連業務の費用

社労士事務所では、顧問業務に含まれない報酬設定も社労士事務所では一般的です。
例えば、助成金申請代行の費用相場は以下の通りです。

・助成金申請代行の費用相場
着手金:2万円~5万円
成功報酬:受給額の15%~20%

就業規則作成

事業運営において、従業員の働き方に関するルールを明確に定めることは欠かせません。職場で起こるトラブルにも、正しく対応するためのベースとなるのが、就業規則です。

労使トラブルを防止するためにも、従業員が1人でもいるなら就業規則は作るべきでしょう。なお、労働基準法において、常時10人以上の労働者を雇用している事業所は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることが定められています。

ただし、労働基準法は「こんなときにこうしたら良い」と、細かい取り決めはありません。
そのため、就業規則で細かくルールを定めなければ、事業運営を正常に行うことは難しいでしょう。

例えば、従業員が病気によって労務提供を正常に行えない場合、その従業員を何日休ませるべきか等は労働基準法では規定されていません。そのため、就業規則がなければ、会社は無給での休職を命令できてしまいます。

こういった事態を避け、事業の運営を正常に行うためには、事業所規模に関わらず就業規則の作成が必須といえます。

費用の相場はおおむね下記の通りです。

就業規則の作成15万円〜20万円
就業規則の変更3万円〜5万円
賃金・退職金等の各種規程作成5万円〜8万円
賃金・退職金等の各種規程修正3万円〜5万円

給与計算

4名以下1万円〜
10名まで1万5,000円〜
20名まで2万円〜
30名まで2万5,000円〜
40名まで3万円〜

人事評価制度構築コンサルティング

この業務には相場というものがありませんが、最低でも30万円から、人数に応じて
1,000万円以上で請け負っている社労士事務所もあります。
基本契約を締結すると、社労士の基本業務外の助成金、給与計算代行、人事評価コンサルティングのサービスを割引価格で受けられるのは魅力といえるでしょう。

顧問契約を結ぶ社労士選びのポイントは3つ

社労士選びのポイント

顧問社労士を選ぶ方法で最も多いのが、インターネット検索です。多くの社労士事務所は公式サイトを持っており、サービス内容等が記載されています。以下、顧問社労士選びのポイントをいくつかご紹介します。

依頼する前に社労士の得意分野等をチェックする

社労士によって、就業規則の作成を得意としたり、助成金申請に力を入れていたりと得意分野は異なります。

また、社労士でもある程度規模が大きくなると、建設業の受託が多い、医療・福祉の受託が多い、小売業が多い等、業種によっても得意分野を客観的に見られます。これは、同業種が抱える問題や取り組み等の有益な情報が得られる可能性が高いためです。

その他に、ホームページで業務内容を確認したり、近隣の社会保険労務士会へ、「〇〇を主に専門にやっている社労士はどこですか」等と確認したりする事も良いでしょう。

最近では、自分で調べるだけでなく、口コミや知り合い等から聞いて、評判の良い社労士を見つける方法も増えてきています。

社労士事務所では、従業員を募集する際に、ハローワーク募集することが、少なくありません。そのページで公開されている社労士事務所の求人票を見ると、表には比較的出てこない情報を確認できます。求人票では、次のようなポイントを見ると良いでしょう。

  • 創業〇年( 経験年数確認 )
  • 従業員数( 規模確認:5人未満は小規模・5人以上~15人未満は中規模・15人以上・25人未満は比較的大規模・25人以上は大規模)
  • 求人が増員のためか( 業務量が増えている )、欠員を埋めるためか( 職員の定着が良くないのか )

依頼したい業務を明確にする

社労士と顧問契約を結ぶ際には、どういった業務を依頼したいのか等を明確にしましょう。先述したように、社労士事務所によって得意分野は異なり、提供するサービス内容も異なります。

また、特に困っていることはなくても、昨今の雇用に関する法改正が多々あり、現在の貴社のやり方( 労働・社会保険関連等 )に不安がある場合には、社労士に相談するのも一案です。社労士によっては、法令順守をチェックして、アドバイスや指導をしてくれます。

相談や連絡がスムーズに行なえる相性の良さ

社労士への相談方法は、電話・メール・訪問・Zoo・LINE・チャット等多岐にわたります。例えば、電話で相談連絡して、返答がもらえるまでにどれくらいかかるのかは、日々業務に追われる事業主様にとって大切なことです。

電話をして顧問社労士が不在時であれば、どれくらいで連絡が取れるか、仮に休日だった場合には、他の社労士またはスタッフでも対応できるのか等、バック体制も整っているか等どうかも重要なポイントです。

メールはいつでも気兼ねなく相談でき記録に残るツールなので、それに社労士が丁寧に対応してくれるかも選ぶ要件の一つとなります。
また、電話やメール等では伝わりにくい内容は直接対面して、相談に応じる等、時間を取ってくれるかどうかは、社労士選びにおいて大切なことです。

社労士と顧問契約まとめ

社労士と顧問契約を結ぶと、労働保険・社会保険や従業員に関する入社から退社までの続き、人事労務管理に関して相談が可能です。

これらを自社処理すると、法改正情報を調べる、申請方法を一から調べる等、かなりの手間と時間がかかるでしょう。

しかし、社労士に依頼すればこれらの手間が減るため、業務負担軽減が期待でき、その分コア業務に集中して取り組めます。従業員が増えている企業は、ぜひ社労士との顧問契約締結を検討してみてください。

また、顧問契約以外に給与計算、就業規則、助成金の申請代行も依頼できます。労務管理担当者を一人採用するよりもコストはかかりません。
まずは、実際に社労士に相談してみることから始めてみませんか?

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