社労士に相談する際の費用は?相場や安く抑えるポイントを紹介

社労士に相談

労働社会保険の手続きや、労働環境の整備など、企業の労務管理は多岐にわたります。そのため、社労士にアウトソーシングする企業も見受けられますが、依頼する際に気になるのは費用ではないでしょうか。

社労士に依頼する際の費用は、依頼する業務内容や依頼先、依頼する企業の規模などで変動します。そのため、依頼先の対応可能業務や料金設定を、事前に確認しておくことが大切です。

そこでこの記事では、社労士に依頼できる業務や費用の相場、費用を抑えるためのポイントを解説します。今後依頼する予定の方は、理解を深めておきましょう。

社労士に相談できる内容は「社会保険分野」と「労働分野」

社労士に相談できる業務内容は、おもに社会保険分野と労働分野に分類されます。それぞれの分野でどのような相談ができるのかを具体的に解説するので、自社が依頼を検討している業務と照らし合わせながら参考にしてみてください。

社会保険(健康保険や年金)分野は社労士のみが行なえる独占業務

社労士に依頼できる業務として挙げられるのは、社会保険加入の手続きや、従業員の入退社に関する手続きです。又、働きながら、年金を受給する在職老齢年金のアドバイスや傷病手当金や出産手当金等の給付手続きがあります。

労働分野は労災、雇用保険の手続きに加えて労働環境の改善が見込めるコンサルティング業務

手続きが専門性を有する労災の手続きや、雇用保険の取得・喪失、雇用継続給付の申請やその管理を社労士へ依頼すると自社の負担を軽減できるでしょう。

また、企業のなかには、長時間労働やハラスメントなど、さまざまな問題を抱えている企業も見受けられます。このような労働問題における課題を解消する際も、社労士に依頼することが可能です。

例えば、労働環境の改善を図る目的で労務診断を行なったり、雇用や人事、教育訓練などに関する相談をしたりと、多岐にわたるコンサルティング業務を担っています。

状況によっては社労士が現場に出向いて調査することもあるため、アウトソーシングすることで自社の課題を迅速に改善、解消できる可能性が高まるでしょう。

ただし、各種保険の手続き代行や、法廷帳簿書類の作成代行は、社労士のみが許されている独占業務です。無資格者がこれらの手続きを行なった場合は社会保険労務士法違反となるため、依頼する際は慎重に決めましょう。

【業務別】社労士にスポットで依頼した際の費用相場

社労士と顧問契約を結んでいない場合は、特定の業務のみをスポットで依頼することになります。業務ごとに費用は異なるため、依頼できる業務ごとの費用相場を確認しておきましょう。スポットは通常、顧問契約と比較して2倍くらいかかる事が多いです。

依頼したい業務内容費用目安
労働社会保険の手続き代行5万円~8万円程度(従業員数5人未満)
就業規則の作成20万円程度
給与計算月額2万円~3万円(従業員数5人未満)
助成金の申請助成金額の20%~30%程度
労務に関するコンサルティング・相談料:5万円~ ・企画立案や運用:50万円~
個別労働関係紛争に関する業務・着手金:2万円~5万円 ・成功報酬:解決金額の20%前後

労働社会保険の手続き代行

労働保険や社会保険の手続きを依頼する際の費用相場は、従業員数が5人未満の場合で5万円~8万円ほどです。厚生年金保険月額算定基礎届や健康保険など、計算が必要になるものは報酬額が高い傾向にあり、従業員数に応じて費用も高くなります。

労働社会保険の手続きは、計算処理以外にも確認書類の添付が必要なものもあるため、他の業務も並行しながら社内リソースでこなすと人的ミスが懸念されるでしょう。その点社労士に依頼すれば、コア業務に注力できたり、手続きの不備を防げたりするので安心です。

就業規則の作成

従業員数が常時10人以上の場合、就業規則の作成と労働基準監督署へ届出が必要です。就業規則に就業時間や服務規律、賃金、退職に関する定め(解雇の事由含む)などを規定することで、労使間のトラブル防止につながります。

就業規則の作成を社労士に依頼した場合、費用相場はおおよそ20万円です。さらに、退職金や賃金規程などは、項目ごとに別途費用がかかります。1規程あたりの費用相場は5万円~10万円ほどですが、依頼先によって料金設定は異なるため事前に確認しておくとよいでしょう。

就業規則の内容に問題があった場合、取り返しのつかない大きなトラブルが労使間で発生する可能性があるため、専門家である社労士に依頼するのが賢明です。

給与計算

給与計算や賃金台帳の作成時は、保険料の天引きや残業代、税金の計算などを行なわなければならず、専門知識を必要とする作業が多いといえます。従業員が増えると作業がより煩雑になることも考慮すると、専門家に依頼して人的ミスを防止することが大切です。

給与計算を依頼した際の費用相場は、従業員数5人未満の場合で月額2万円~3万円です。従業員数が増えるごとに費用は高くなりますが、大幅に高くなるというわけではないため、業務リソースを確保したい場合は依頼するとよいでしょう。

助成金の申請

助成金申請の代行を依頼する場合の費用相場は、助成金受給額の20~30%といわれています。依頼先によっては着手金が発生するケースもあるため、事前に確認しておくことが大切です。なお、すでに顧問契約している場合は割引されるなど、着手金を支払わなくても良いケースもあります。

助成金を申請するにあたり、就業規則の整備や事業計画書の作成など、要件を満たさなければならない場合は、別途費用が発生することを理解しておきましょう。

助成金は制度が頻繁に改正されているため、最新の情報に強くなければ利用するのは難しいかもしれません。そのため、社労士に依頼して適切な手続きを行なうことが、受給できる可能性を高める方法といえるでしょう。

労務に関するコンサルティング

労務に関するコンサルティングは独占業務に該当しないため、社労士の資格がない人に依頼することも可能です。しかし、労働環境を整えるためには、労務関係の知識や経験が豊富にある社労士に依頼するほうが効果的でしょう。

一般的な相談料の相場は5万円ほどですが、従業員数や相談内容の範囲によって費用は大きく異なります。例えば、自社が抱える課題の抽出や、制度の見直しが必要な場合は、企画立案や運用指導の依頼も検討しなければなりません。これらも含めた場合、50万円~100万円以上の費用がかかることもあるため、依頼する範囲を明確にしておくことが重要です。

個別労働関係紛争に関する業務

労使間でトラブルが発生した場合、ADR(裁判外紛争解決手続)によって解決を目指すケースがあります。ADRを依頼する場合、着手金と成功報酬が必要になると考えておいてください。

着手金は2万円~5万円ほど、成功報酬は解決金額(和解金額と労働者が提示していた金額の差)の20%前後が相場です。解決に至らなかった場合は、解決金を支払う必要はありません。

依頼先によっては着手金が安い代わりに、成功報酬を高く設定していることもあるので、依頼前に料金設定の詳細を確認しておくことが大事です。なお、ADRを行なえるのは特定社会保険労務士のみで、すべての社労士が対応できるわけではない点に注意してください。

社労士への相談で費用が変動する要素

社労士に相談する相場

社労士費用が変動する要素には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、費用の変動に関係している要素を説明するので、依頼を検討する際にお役立てください。

依頼を希望する企業の従業員数

前述のように、給与計算や各種手続きでは専門知識が求められ、不備がないよう適切な方法で手続きを行なう必要があります。従業員が1人増えるごとに、作業がより煩雑になることも想像に難くありません。

社労士事務所によって料金設定は異なりますが、Webサイトなどで公開している社労士事務所もあるため、依頼を検討している場合は確認しておくとよいでしょう。

依頼する業務内容

費用相場の解説でもわかるように、各種保険の手続きや就業規則の作成など、依頼したい業務内容によって設定されている依頼料は異なります。そのため、依頼する業務が少ないからといって、費用を安く抑えられるとは限らないのです。

また、就業規則や労使協定などに関しては、これから作成するのか、既存の内容を見直すだけなのかによっても費用は異なります。労使双方の関係を良好に保つためには、就業規則を定期的に見直すことも重要なため、長期運用には相応の社労士費用がかかるでしょう。

スポット的な依頼か、顧問契約した方が良いか

労働保険や社会保険の手続きは、従業員が入社したときだけでなく、退職時にも行なわなければなりません。手続きが発生する度に依頼するよりも、顧問契約で依頼したほうが費用を抑えられる可能性があります。

また、手続き以外にも、労働社会保険諸法令の法改正や労働者とトラブルになりそうな時に、事前に相談が出来て解決できるケースも少なくありません。

またあと、顧問契約を結んでいると、契約に含まれない業務を依頼したとしても、通常のスポット料金より安く依頼できることがあります。

長期的に依頼する可能性を考慮した場合、スポット的な依頼と顧問契約、どちらがコスト削減になるかを慎重に検討することが大事です。

社労士との顧問契約における費用相場や相談内容

ここでは、実際に社労士と顧問契約を結んだ場合の費用感や、依頼できる相談内容について解説します。

月額顧問料の費用相場

顧問契約を結んだ場合、月額顧問料の費用相場は従業員数によって変動することが一般的です。従業員数が10人未満なら2万円~3万円、20人未満なら4万円ほどが相場でしょう。

以前までは社労士の報酬規程が存在したため、依頼先を問わず一律の報酬が定められていました。現在は廃止されているものの、旧報酬規程を基準に報酬を設定している社労士事務所も見受けられます。そのため、おおよその費用感を把握する際は、旧報酬規程を参考にするのも一つの方法として有効です。

顧問契約で相談できる業務内容や契約タイプ

簡単に済む程度の法律相談や労働社会保険の基本的な手続きなどの場合、顧問契約の範囲内で行なっている社労士事務所が多い傾向にあります。ただし、具体的な内容は依頼先によって異なるため、事前に確認しておいてください。

また、ニーズの多様化にともない、さまざまな契約タイプを用意している社労士事務所もあります。例えば、以下のような契約タイプです。

【従業員数5人以下の場合】
・ 月額顧問料2万円で各種手続き代行とコンサルティングに対応
・ 月額顧問料2万円で各種手続き代行とコンサルティング+給与計算(給与データ管理費月額1万円)

自社にとって優先度の高い業務が含まれている契約タイプの場合、スポットで依頼するよりも費用を抑えられる可能性があります。そのため、優先度の高い業務と顧問契約で対応してもらえる業務が一致している場合は、顧問契約を検討するのがおすすめです。

社労士に相談する際の費用を抑えるポイント

相談する際の費用

社労士に依頼する際の費用は、依頼先や業務内容によって大きく異なります。ここでは、費用を抑えるポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

事前に対応可能業務を調査し見積もりを出してもらう

社労士に依頼できる業務や費用は、依頼先の公式Webサイトでも確認できます。しかし、就業規則の作成などは、依頼者の要望に応じて工数や費用が変動するため、あくまで目安金額の確認しかできません。

実際に依頼した際の対応内容や費用を把握するには、見積もりを取りましょう。見積もりを取ることで、費用だけでなく、対応可能な業務範囲も明確になります。

依頼先によっては、自社の要望と依頼可能な業務内容に相違があるかもしれません。より相性の良い依頼先を見つけるためには、2社~3社に見積もりを取って比較検討するのがおすすめです。

自社にとって優先度の高い業務のみを依頼する

社労士事務所にはさまざまな業務を依頼できますが、際限なく業務を依頼するとコストが膨れ上がってしまいます。利益の少ない状況で多くの業務を依頼してしまうと、経営を圧迫しかねません。

まずは年間の売上を踏まえ、社労士費用に充てられる予算を算出しておくとよいでしょう。次に、社労士のサポートが必要な業務と社内リソースで対応できる業務を明確にし、予算を照らし合わせながら依頼内容を決めます。

従業員が少ない場合は手間もそれほど多くないため、社内リソースで業務を行なうのも一つの方法です。従業員の増加や企業規模が大きくなった際など、社内リソースでの対応が難しくなった時点で、社労士への依頼に切り替えてもよいでしょう。

相談内容によっては顧問契約を結ぶことで安くなるケースもある

就業規則や給与計算などは、顧問契約の対象外になることが多い業務です。そのため、依頼するとなれば月額顧問料とは別に費用を支払う必要があります。

しかし、顧問先とそれ以外の顧客に対する料金設定を差別化している社労士事務所もあるため、顧問契約したほうが費用を抑えられることもあるでしょう。

また、依頼先を決める際に重要なのは、依頼したい業務が、顧問契約にどれだけ含まれているかです。たとえ顧問契約を結んでも、依頼したい業務が顧問契約の範囲に含まれていなければ、別途費用を支払うことになるので注意してください。

まとめ

社労士に相談できる業務は、労働保険・社会保険の手続きや、労働環境改善に向けたコンサルティング、助成金など多岐にわたります。費用は依頼内容だけではなく、毎月支払う顧問契約なのか、依頼する時にのみ支払いするスポット契約なのかなどでも異なります。

自社で対応可能な業務は、社内リソースを使うことで費用を抑えられますが、従業員数や企業規模によっては、業務が煩雑になるでしょう。社労士に業務を依頼する場合は、予算と依頼可能な業務範囲を照らし合わせて、自社にとって適切な条件で契約を結ぶことが重要です。